美容栄養学の専門家*池上淳子の深堀り情報ブログ

美容栄養学の専門家、池上淳子のブログです。管理栄養士、美容食インストラクター、美容栄養学専門士 多くの方の健康増進、美容、食生活に役立つ情報をお届けします。

タンパク質の体内における働きの重要性と摂取量

 

タンパク質とは

 

 タンパク質は生命維持に必要な最も基本的な物質で組織の構築や様々な機能を果たしています。

 体タンパク質の合成に必要なアミノ酸の中でも必須アミノ酸9種類は食事から摂らないといけません。食事中のタンパク質は消化管で消化された後、アミノ酸や低分子ペプチドとして吸収されます。吸収された低分子ペプチドは速やかに分解されてアミノ酸になり、生体内のタンパク質や生体機能物質の材料として利用されます。

 

タンパク質の消化と吸収
食事中の全てのタンパク質は消化管で消化された後、吸収される。食事中のタンパク質は胃液(ペプシン)、膵液(トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ等)、腸液(アミノペプチターゼ、ジペプチターゼ等)の一連のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の作用により、アミノ酸やオリゴペプチド、ジペプチドにまで分解、消化される。タンパク質消化の大部分は管腔内で行われるが、一部のオリゴペプチド、ジペプチドは小腸上皮細胞上に刷子縁膜上にある消化酵素によって膜消化される。このようにそうかされたタンパク質はアミノ酸や低分子ペプチドとして主に空腸上皮細胞に存在するアミノ酸輸送タンパク質やペプチド輸送タンパク質によって細胞内に取り込まれる。空腸上皮細胞に取り込まれたアミノ酸や低分子ペプチドは門脈(小腸静脈)により肝臓に運ばれる。

タンパク質の合成と分解

 

 体タンパク質は合成と分解を日々繰り返しており、その種類によって代謝回転速度は異なっています。食事タンパク質必要量とは生体が必要とする量、代謝要求量を満たす為に必要な摂取量と言えます。

代謝回転速度
体タンパク質の半減期
筋肉:約180日
ヘモグロビン:約60日
アルブミン:約20日
肝臓:約10日
トランスフェリン(Tf):7~10日
トランスサイレチン(TTR)プレアルブミンPA):1.9日
レチノール結合タンパク質(RBP):0.7日
ヒトの体タンパク質全体の反撃の平均 70~80日

タンパク質の欠乏が招く健康被害

 

 タンパク質量が欠乏すると、生体量が部位によって順番に減少していきます。

1筋肉量の減少(骨格筋、心筋、平滑筋)
2内臓タンパク質の減少(アルブミン等)
3免疫能の障害(リンパ球、白血球、抗体、急性相タンパク質等)
4創傷治癒遅延
5臓器障害(腸管、肝臓、心臓等)
6生体適応の障害
→生命維持不能

タンパク質が不足して欠乏状態になれば早期発見をして食事内容を改善していく必要があります。

 

体タンパク質の機能

 

 


1構造タンパク質

 


皮膚を形成して体を保護して、体内で結合組織は細胞、組織、器官の支持体として働いている。骨や歯のような硬組織も骨気質タンパク質にミネラル沈着して出来ている。結合組織の主要なタンパク質はコラーゲンである。他にエラスチンは弾力性に富み、血管、皮膚、靭帯等に存在している。毛髪や爪に含まれるケラチンは水に溶けず、そうか酵素に抵抗性を示す。

2酵素タンパク質

 

酵素は全てタンパク質である。細胞のあらゆる部位に存在し、生体内での反応の触媒として作用している。

3輸送タンパク質

 

細胞膜に存在する細胞内外の物質の輸送や、血液を介する組織間の物質輸送に関与している。
Na+-K+-ATPアーゼ(細胞膜に存在、NA+を細胞外へK+を細胞内に取り込む)
グルコーストランスポーター(グルコースを細胞内外へ輸送)
アルブミン(遊離脂肪酸等様々な物質と結合して運搬)
トランスコルチン(甲状腺ホルモン)
レチノール結合タンパク質(レチノール)
トランスフェリン(鉄)
セルロプラスミン(銅)
ヘモグロビン(赤血球内、酸素を肺から全身の組織に運搬)

4収縮、運動タンパク質

 

アクチン、ミオシン、トロポニン等の筋タンパク質は筋収縮を起こし、体の運動を司っている。全ての細胞内のアクチン、チューブリン等は細胞骨格を形成し細胞分裂、エンドサイトーシス、エキソサイトーシスに関与している。

5防御タンパク質

 

様々な侵襲に対して生体は防御機構を備えている。
皮膚に存在するケラチンは生体を防御し、微生物の侵入を防いでいる。
肝臓で合成されたフィブリノーゲンから生成されるフィブリンは血液凝固に関わり、血管傷害時の出血を防いでいる。
リンパ球でつくられた免疫グロブリンは抗原抗体反応により抗原を特異的に中和している。
その他ウイルスの感染防御に働くインターフェロン、重金属の解毒に関与するメタロチオネイン等もある。

6調整タンパク質

 

生体の機能は神経系と内分泌系により調節されている。神経系で働いている神経伝達物質の多くはアミノ酸代謝産物である。また内分泌系はホルモンを産生し、生体機能を調節しているが、アミノ酸誘導体、ステロイドホルモン以外は全てタンパク質ホルモンである。これらのホルモンの細胞膜に存在する受容体タンパク質に特異的に結合してその機能を発揮している。

7受容体タンパク質

 

ホルモンや神経伝達物質はそれぞれに特有の受容体に結合して作用している。受容体は特別の化学物質を認識するタンパク質である。

 

エネルギー不足によるタンパク質合成の低下

 

タンパク質の体内での利用効率は摂取するタンパク質、アミノ酸、総窒素の量により変化します。またそれ以外の栄養素の摂取量により、タンパク質代謝は影響を受けます。

エネルギー不足はタンパク質利用効率を低下させ、逆にエネルギー摂取が増すと窒素出納は改善されます。これはインスリン分泌の増加によるタンパク質合成の促進、分解の抑制が寄与しています。
即ち、筋肉をつけたり、美肌生成をしたいという場合、炭水化物や糖質を制限する事は非効率と言えます。

タンパク質の摂取量

 

 現行のタンパク質摂取量の基準では、タンパク質の耐用上限量を策定し得る明確な根拠が十分には見当たらないので耐用上限量は設定されていません。

 しかし、40歳以下の健康成人に1.9~2.2g/㎏体重/日のタンパク質を一定期間摂取させると、インスリンの感受性低下、酸・シュウ酸塩・カルシウムの尿排泄増加、糸球体ろ過量の増加、骨吸収の増加、血漿グルタミン濃度の低下等の好ましくない代謝変化が生じる事が報告されています。

 また65歳以上の男性に2g/㎏体重/日以上のタンパク質を摂取させると、血中尿素窒素が10.7mmol/L以上に上昇し、高窒素血漿が発症することが報告されています。

 これらの報告により、成人においては年齢にかかわらず、タンパク質摂取は2.0g/㎏体重/日未満にとどめるのが適当であると考えられます。

 健康な成人の耐用上限量は推奨量の約2倍(2.0g/㎏体重/日)以上と推定され、窒素平衡維持の為の推定平均必要量は0.6~0.8g/㎏体重/日と見積もられているのでタンパク質摂取量が1.0~1.5g/㎏体重/日の範囲内であれば、不足あるいは過剰のいずれの危険性も少ないと考えられます。

最後に

 

タンパク質=proteinの語源はギリシャ語で「第一のもの」という意味です。
それだけ、生体に必要なタンパク質ですが、近年の健康ブーム、ダイエットブーム、筋肉ブームがタンパク質との向き合い方を誤った方向へ追いやっている事も多く見られます。
大切なタンパク質ですが、当然エネルギーや他栄養素も必要です。例えばタンパク質の摂取量が増えればビタミンB6もその分多く必要となります。体内では単発で代謝が行われている訳ではありません。あらゆる栄養素が混ざり合って、働きを起こす事が出来ます。多く摂る事が良い・・という考え方で健康被害も後を絶ちません。
正しい知識を身につけて、健康で痩身で美しい筋肉のプロポーションを手に入れて下さい。

 

eiyo-c.com